国体創造 - 1 平成新憲法私案

1.3 本文

1 前文

 神武天皇が即位された建国の日以来、我が国は様々な社会体制に変わってきた。その中で憲法という国家規範をかんがみる時、我々はひときわ優れた以下二つの国家規範を知っている。

十七条憲法

 聖徳太子が定められた、国に報じる者が守るべき規範を最も明瞭に示したもの。以下に現代の風物にあてはめた略文を記す。

 一、 和することが貴い。上下のいさかいを無くせばできないことはない。
 二、 あつく仏教を信じよ。
 三、 天と地はおのずと異なる。天皇を尊び勅命に従え。
 四、 礼儀正しくせよ。
 五、 国民の豊か貧しいに関わらず公正に裁け。
 六、 へつらい媚びる者に耳を貸さず、悪行を正し善行を勧めよ。
 七、 才能ある者をしかるべき地位につけよ。
 八、 朝早くまた夜遅くまで勤勉に働け。
 九、 誠実に仕事をせよ。
 十、 考えの異なる者を愚か者と決めつけ怒ったり自分を賢者と決めつけたりするな。まず自分を省みよ。
 十一、賞罰を厳正に行え。
 十二、勝手に領民に税を課すなど公財産を横領してはならない。
 十三、自らの仕事の内容を深く正しくわきまえよ。
 十四、むやみに他人を妬むな。
 十五、私心を捨て公のために仕事をせよ。
 十六、民役を課す場合は、民衆の都合を考えよ。
 十七、大切な事柄は多数でよく話し合って決めよ。そうでない事柄は小人数で即断せよ。

五箇条の御誓文

 明治天皇が誓われた、近代国家のあり方を最も明瞭に示したもの。

一、廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スベシ
一、上下心ヲ一ニシテ盛ニ經綸ヲ行フベシ
一、官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ゲ人心ヲシテ倦ザラシメン事ヲ要ス
一、舊来の陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クベシ
一、智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スベシ

 我々の祖先は、以上のような英知に満ちた国のあり方を示した。我々は改めてこれらの意志を受け継がねばならない。その上で外国の占領と蹂躙と干渉を廃し祖国の独立を守ることのできる新しい時代の盤石な国造り行わねばならない。
 以下にわが国の政体を構成する要素とそれぞれの役割を定めた政体運営の手順を記し、わが国の憲法とする。

◇筆者コメント:

解説:
 新しく憲法など作るまでもなく、実は我々の先人は明瞭にして完璧な国家規範を既に作り上げている。上記二つの。
 とはいえ「仏教を信じよ」など、必ずしも現代情勢と画致しない部分もある。これは、五箇条の御誓文にある「智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スベシ 」と同じ意味だと解釈できるだろう。仏教は聖徳太子の時代における最先端の外来思想(建築技術などを含んだ)だからだ。

 我々の国の成り立ちを憲法で記述するべきだ。中でも、憲法前文に憲法の歴史を記述するのがいいと思う。
 我々の国は、何千年にもさかのぼる祖先の英知と努力によって成り立っている。突如として湧いてきたわけではない。憲法という国家規範を規定するにあたって、祖先の英知を丸ごと切り捨てるような思い上がりがあってはならない。
 前文において明瞭に祖先の英知を受け継ぐことを宣言し、祖先への敬意をまずは確認する。その後に、未来に向けた新しい国体の提起を行うという形をとるべきだ。
 いずれにせよ、上記二つは国に報じる者が守るべき規範としては、考えうるかぎり究極のものだ。政治家や役人がどうあるべきかは、結局十七条憲法に完璧に記されている。近代国家のありかたは、五箇条の御誓文に簡潔に記されている。あまりに明瞭に。

 筆者は説教を憲法から除外せよと主張している。それは、十七条憲法という既に完全な説教文が存在するからだ。更にここにダサいヘーワとかジンケンなどのいかがわしい説教の追加など不要だ。我々がなしうることは、せいぜい現代に見合った国家体制の定義を行うことだ。
 以下に記述しているのは結局それだ。

第一章 天皇

第一条、天皇

 天皇は日本を統べる君主にして最高の権威者である。

◇筆者コメント:

解説:
 政治機構における天皇の位置づけを定義している。
 天皇を最高権威者かつ立候補権選挙権すら持たれない非権力者とし、なおかつ国民を最高権力者と規定することで、権威(国の礎となる威光)と権力(国を実際に動かす者)の完全な分離を実現している。これにより独裁者(権威と権力双方を掌握した者)の台頭を完全に阻止する。

 「統べる」という語彙は、かつて天皇をスメラミコトとお呼びしたことに起因する。

 現憲法では何と国家元首の規定が存在しない。国体を定義する文章である憲法として、話にならないシロモノだ。本私案では、天皇を君主と規定し国家元首であることを明瞭に記した。

第二条、皇位

 天皇は建国の古より未来永劫続く三種の神器を証とした万世一系の地位である。日嗣の御子は一親等男子である。以降は親等順となる。

◇筆者コメント:

解説:
 皇位を継がれる条件を定義している。
 世襲であるため、いかなる権力者も天皇になることはできない。よって独裁体制は抑止される。

 「未来永劫」の語彙については異論のある人もあろう。「法にせよ憲法にせよ施行されている期間内において有効なものだ。未来永劫なる語句の入る余地はない。」という論法で。説得力のある言い草だ。本来正論である。当然、現憲法にある「戦争を永久に放棄する」などという語句も、そもそも法のありかたとして話にならないものだ。
 しかし憲法では伝統的な国体の概念を反映させるべきである。日本における悠久の国体はまずおいて天皇である。天皇に限り「未来永劫」という語句を用いた。

第三条、摂政

 天皇が公務を行いえぬとき、日嗣の御子が摂政となりこれにあたる。

第四条、公務

 天皇は以下の公務を行う。二、三、七においては国会が責任を負う。二、五においては裁判院が責任を負う。六においては藩民が責任を負う。その他全ての公務の責任は内閣が負う。公務により生じたいかなる結果にも、天皇は責任を負わない。

 一、大嘗祭、新嘗祭など皇室において伝統的な儀式を行う。
 二、国会や裁判院を招集し開会を宣言する。
 三、国会が指名した内閣総理大臣を任命する。
 四、内閣総理大臣が指名した閣僚を任命する。
 五、裁判院が指名した最高裁判所長官を任命する。
 六、藩民が選んだ藩主を任官する。
 七、国会が可決した憲法、法律、制令、条約、藩割りを公布する。
 八、改元を行う。
 九、叙勲、報奨、大赦を行う。
 十、儀礼上の外交や式典への出席を行う。

◇筆者コメント:

解説:
 天皇が行われるご公務を定義している。

第五条、天皇の禁則

 天皇は以下の行為を行なわない。

 一、立候補や投票。
 二、議員、もしくは内閣総理大臣、閣僚、藩主、最高裁判所長官となる。
 三、官僚となる。
 四、特定政党や特定政治家や特定政治思想の支持不支持を表明する。
 五、納税や兵役や民役。
 六、立太子の礼を終えた皇太子がいない状況での退位。

◇筆者コメント:

解説:
 天皇が行われるべきでない行為を定義している。天皇はあらゆる権力、つまり世俗から完全に乖離なさる。

第二章、国民

第六条、国民

 国民は、日本の構成員にして最高の権力者である。

◇筆者コメント:

解説:
 政治機構における国民の位置づけを定義している。

第七条、国籍取得

 国民の嫡子は国民となる。また父母のいずれかが国民であった場合、他国籍を獲得しない嫡子は国民となることができる。
 また以下の要件を満たす外国人は帰化することができる。

 一、祖国日本への忠誠を宣誓すること。
 二、内閣及び居住する藩双方の承認を得ること。
 三、兵役または民役を終えること。
 四、基礎的な国語の会話ができること。
 五、保証人となる国民がいること。国民との婚姻の場合は配偶者である国民が保証人となること。帰化後十年間は、法的責任を保証人も負う。
 六、帰化から十年以前にさかのぼり法的処罰を受けていないこと。

 なお帰化後十年以内においては、複数世帯の近隣住民、または百分の一以上の藩民から帰化却下申請を受けた場合は、帰化が取り消される。

◇筆者コメント:

解説:
 国民となる条件を定義している。

第八条、国籍離脱

 国民は国籍を離脱することができる。国籍を離脱した者は、再び国民となることはできない。

◇筆者コメント:

解説:
 国民をやめる条件を定義している。

第九条、国民が行うこと

 国民は以下の行為を行う。

 一、国会議員選挙、裁判院議員選挙に立候補もしくは投票を行う。もしくは棄権する。
 二、藩議会選挙に立候補もしくは投票を行う。もしくは棄権する。
 三、藩主選挙に立候補もしくは投票を行う。もしくは棄権する。
 四、国会が提起した憲法改正案に投票を行う。もしくは棄権する。
 五、納税を行う。
 六、内閣が科す兵役や、藩が科す民役に従事する。
 七、国会や藩議会の定めた法や条令を守る。

◇筆者コメント:

解説:
 国民が政治機構との関わりにおいて行う行為を定義している。
 投票への棄権も行うことに加えた。政治に興味を持たない自由もまた、極めて重要な政治的自由の一つだからだ。旧ソ連のように、投票を強要される社会体制であってはならない。

第十条、国民の禁則

 国民は以下の行為を行ってはならない。

 一、天皇を騙る。
 二、天皇に政治的な事柄への見解を述べるように強要する。
 三、選挙によらず藩主や内閣総理大臣や議員を騙る。
 四、外患誘致、国家転覆の謀略。
 五、外圧の誘致による政府への干渉。
 六、暴力や暴動など、選挙や立候補や国民投票にもとずくことのない政府への干渉。
 八、脱税。
 九、賭博、売春斡旋。
 十、その他法や条令を破る行為。
十一、経営や売買など公的な活動における、出身や性別や人種や宗教を理由とした差別。ただし能力による区別はこれにあたらない。
十二、他の国民への政治的発言、あるいは沈黙の強制。
十三、奴隷の所持。

◇筆者コメント:

解説:
 外患誘致など、国の存続に関わる内容を明記した。
 賭場や売春斡旋を国民に禁止し、内閣や藩など行政の寡占事業とした。暴利をむさぼる事業であり民間に適さない事業だからだ。公正な賭博、衛生管理のされた売春を行政が行い、公的な収入源とする。

 現憲法下で、天皇はさんざん政治的に利用されている。主に政府外務省と新聞記者により。政府外務省は、天皇にさんざん土下座外交を強要し、「謝罪」のお言葉を強要し続けている。記者もまた、記者会見において天皇に政治的発言を幾度と無く強要している。
 「二、」により天皇への政治的発言の強要を抑止し、これを完全にやめさせる必要がある。

第三章、国土

第十一条、国土

 我が国の国土は歯舞、色丹から竹島、小笠原、沖縄に至る地域である。詳細は国土規定書に記述する。

◇筆者コメント:

解説:
 日本国国土を定義している。これを定義しない憲法もしくは憲法案の多いことに筆者は驚愕する。国土という生存域無しに国も国民も、ましてやご立派な理念とやらも成り立たない。

第十二条、国土の管理

 国土は内閣により保証され、内閣及び藩により保守管理される。

◇筆者コメント:

解説:
 国土の管理者を内閣及び藩に定めることにより、地主の既得権を制限する。これにより借家人借地人の利便を図り、各種の公共的な土地利用を促進可能にする。
 また、国土の保証とは国防のことである。国土の保証者を明瞭に内閣と定め、北方領土に見られるような従来の政府による領土管理の怠慢を抑止する。

第四章、国旗国歌年号

第十三条、国旗

 日の丸を国旗とする。詳細は国旗規定書に記述する。

◇筆者コメント:

解説:
 国旗を定義している。くだらない政策内容の定義などより、こういう国の基本構成要素こそ憲法で定義するべきだ。

第十四条、国歌

 君が代を国歌とする。詳細は国歌規定書に記述する。

第十五条、年号

 元号を年号とする。改元は皇位の継承により行わる。

第五章、政府

第十六条、政府

 政府は日本を護持し国家主権を守り国民の利益を公的に実現するための集まりである。天皇の権威と、国民の権力に委託される。政府はその役割により、国会、内閣、裁判院、藩、藩議会に分類される。

第十七条、政府の禁則

 国会、内閣、裁判院、藩、藩議会などあらゆる政府機関は、以下の行為を行ってはならない。また国会、議会は、以下の行為を認める法や条例を可決してはならない。

 一、国民による立候補や投票を妨害したり強要したりすること。
 二、国民による投票の内容を開票前に政府が覗き見ること。あるいは実質的に知りうる処置をこうじること。
 三、議員や所轄する官僚でない国民による政治的な発言や表明を、制限したり妨害すること。
 四、国民による文化活動や経済活動を妨害すること。
 五、国民の政治権力すなわち、それぞれの機関が国民から付託された立法権、行政権、司法権を外国やテロリストに譲渡すること。例えばそれらの行使にあたって外国政府やテロリストの干渉を受け入れること。
 六、特定国民のみの利便をはかること。たとえば記者会見のように特定国民のみに公的な情報を開示する行為。
 七、特定国民のみに偏った政治権力を与えること。たとえば弁護士団体や官僚に最終的な人事権を譲ること。

◇筆者コメント:

解説:
 「特定国民のみの利便をはかること」に記者会見を明言した。国民の間で政治的な不平等があってはならず、その政治的不平等の典型例だからだ。
 現在、記者には以下の政治的特権が認められている。
@ 政治家の話した情報を真っ先に聞き、(時に歪曲デフォルメした)編集をして国民に流布する権力
@ 政治家に質問する権力
 全て政治家による記者会見という慣行による。
 言うまでもないことだが「特定の職業であることを理由に、政治的な特権が認められる社会体制。」など間違っている。いうなればそれは貴族制である。今現在、報道媒体という貴族に政治的特権が認められている社会体制なのだ。一票たりとも票を得ていない存在であるにもかかわらず。
 政治家は、どうしても「記者会見」を行うのであるなら、「百姓会見」、「事務員会見」、「大工会見」、「工員会見」、「商店主会見」、「金貸し会見」、「ヤクザ会見」も行うべきだ。政治的な権力において職業による差別があってはならないからだ。
 政治家が本来、国民に話し訴えるべき場所は議会である。テレビのある現代では記者会見はもう不要である。政治家はテレビ中継された議会や委員会で国民に訴えるべきだ。もしくは、テレビ放送枠を設けて直接国民に訴えるべきだ。安物のニュースキャスターの権力の及ばない場において。
 もっと具体的に言うなら、内閣総理大臣や地方行政の長が議員会見及び国民会見を毎週程度行うことを提言する。予算審議中にかぎらず毎週議員会見を行い議員からの質疑応答に答えるようにするのだ。かつ、その有り様をテレビもしくはネットで公開する。マスメディアはそれを記事にすればいい。
 政治家の国民会見はネットで行う仕組にすればいい。質疑内容をネット投票し、その質疑そのものに国民に投票させ、賛同の多い質疑に政治家は答えるのだ。こうすれば、国民が直接大臣や議員や官僚に訊ねることができる。

 「特定国民のみに偏った政治権力を与えること」に、弁護士団体を明記した。
 現在、最高裁判所判事の何人かは、日弁連の推薦なしに任命できない政治構造が出来上がっている。何一つ選挙によらない単なる職業団体に、司法権の最高権力の一部が与えられているのだ。極めて非民主的な、ある種の貴族制である。日弁連の貴族的な政治権力を剥奪し、我々国民に取り戻す必要がある。

第六章、国法の立法

第十八条、国会

 国会は、国民の国法立法権を代行する組織である。

第十九条、国会成立の条件

 国会は、国民による選挙により選ばれた国会議員により構成される。天皇の招集により国会は成立する。ただし外国により干渉された下での憲法法律条約の制定など国会活動の全ては無効である。
 国会議員は一藩に一人である。

◇筆者コメント:

解説:
 国会が国会として認められる条件を定義している。衆議院参議院の二院制度は廃止する。無駄だからだ。現在の参議院の議場は、司法の国会とでもいうべき裁判院の議場とする。裁判院が違憲立法などの審査を行う。
 また、議員の無用な増加を抑止するため一藩に一人の完全小選挙区とした。

第二十条、国会が行う事

 国会は、以下の行為を行う。ただし裁判院が違憲と認めた立法など国会活動は無効である。

 一、法律、制令、条約を可決承認し天皇に報告する。
 二、内閣総理大臣を指名または解任し天皇に報告する。
 三、藩割りを作成し天皇に報告する。
 四、議長など議会の運営に必要な人員を任命する。
 五、内閣が提出する予算案を承認する。
 六、議決内容を開示する。
 七、憲法改正案を国民に提起する。国民投票の結果、改正案が現行案を上回った場合、憲法の改正内容を天皇に報告する。

第二十一条、議会の禁則

 国会、裁判院、藩議会などあらゆる議会は、以下の行為を行ってはならない。

 一、議事や議決を国民に隠蔽する。
 二、議会を国民の見聞きできない場所で行う。
 三、行政権や司法権を侵害する。
 四、人身売買を認める法や条令の可決。
 五、野党を禁止する法や条令の可決。
 六、国内の外国人に治外法権を認める条約や法や条例の可決。
 七、可決から三十日以下で発布を行う。

◇筆者コメント:

解説:
 裁判院に違憲審査をする機会をあたえるため、法律、制令、条約の可決から発布までが三十日以上必要であることにした。

第二十二条、国会の禁則

 国会は、以下の行為を行ってはならない。

 一、郷土の文化的背景を無視した藩割りの作成。

第二十三条、議員の禁則

 国会、裁判院、藩議会などあらゆる議員は、以下の行為を行ってはならない。

 一、議事進行の妨害。
 二、収賄。

第二十四条、国会議員の禁則

 国会議員は、以下の行為を行ってはならない。

 一、裁判院議員との兼任。
 二、藩議会議員との兼任。
 三、藩主との兼任。

◇筆者コメント:

解説:
 三権分立の建前により兼任を不可能にした。

第七章、国政の行政

第二十五条、内閣

 内閣は立法司法を除くあらゆる国政を行う。全権は内閣総理大臣にある。内閣総理大臣は、閣僚や国家公務員を任命し国政の一部を代行させる。

◇筆者コメント:

解説:
 政治機構における内閣の位置づけを定義している。人事権を与え、現行ありがちな政治家を軽んじた官僚の独断や暴走を抑止する。これにより、官僚ではなく民衆の代表者が政治を行う社会体制、つまり民主制をより強固に確立する。

第二十六条、内閣総理大臣となる条件

案1:議院内閣制
 内閣総理大臣は、国会の指名により選ばれる。天皇の任命をえて任官する。最大任期は十年とする。

案2:首相公選制
 内閣総理大臣は以下の手順で選ばれる。任期は五年であり、最大在職期間は十年とする。

 一、現職内閣総理大臣に対する国民からの否認投票数が現職総理大臣が得た得票数を上回った場合、もしくは任期満了まで残り一ヶ月となった場合、天皇は国会に内閣総理大臣の公募を行う。
 二、二期以上の国会議員経験のある国会議員が、二割以上の国会議員による推挙を受けて立候補する。
 三、天皇が内閣総理大臣選挙を国民に対して公示する。
 四、国民が投票を行う。
 五、国民から最大の得票を得た国会議員を、天皇が内閣総理大臣に任官する。

◇筆者コメント:

解説:
 独裁体制抑止のため任期をもうけた。

 今ひとつ賛成できないが、昨今流行であるので首相公選制の案も記した。

第二十七条、内閣が行うこと

 内閣は以下の行為を行う。

 一、皇室の護持。
 二、軍隊を組織し、外国の侵略やテロや災害から国民の生命財産及び国土を守る。また外国軍の駐留を防ぎ国家主権を保持する。
 三、治安の維持を行う。
 四、外交を行う。
 五、予算案や法案を作成し国会に提出する。
 六、少数の藩では行うことのできない大規模なもしくは広域的な社会基盤整備を行う。
 七、国民が行う国益となる文化活動の保守繁栄や、大規模な経済活動を補佐する。
 八、国民へ民族文化の教育を行う。
 九、貨幣を発行する。
 十、藩の組織構造や藩政の内容や国民の行為が、憲法や法令に違反しないかどうか査察し裁判所に訴える。
十一、藩割りを作成し国会に提出する。
十二、業務の委託先、委託内容、委託金額など政策の開示を行う。
十三、藩間格差補正のため、藩からの補正金の徴収及び分配を行う。
十四、裁判所が下した刑罰など行政執行を行う。

◇筆者コメント:

解説:
 福利厚生などは基本的には藩が行う。国防や大規模な社会基盤整備など、どうしても中央政府でなければできない内容や、中央政府が行ったほうが良いと思える内容のみを記述した。
 藩間の格差を無くす為の補正金を徴収し、分配するようにした。格差補正金であることを明瞭にし、乞食藩には他藩の重荷となっている事を身にしみて理解させる。これにより自助努力を期待する。

第二十八条、行政の禁則

 内閣、藩など行政は以下の行為を行ってはならない。

 一、議会会期中の国会議員を、国会の承認なしに拘束すること。
 二、議会会期中の藩議会議員を、藩議会の承認なしに拘束すること。
 三、国防や治安維持に関わりのない業務の委託先、委託内容、委託金額を隠蔽すること。
 四、国民の個人情報を、本人以外に開示すること。業務委託先は個人ではない。
 五、国土や国民を、外国に譲渡したり売却すること。
 六、藩の税収を上回る補正金の分配。
 七、有事の場合以外に自国軍の百分の一以上の規模の外国軍を駐屯させること。有事において自国軍以上の規模の外国軍を駐屯させること。
 八、予算の百分の一を超える金額の国民資産を外国に譲渡すること。近隣核武装国家に国民資産を譲渡すること。
 九、利息額が予算の百分の一を超える金額の国債を発行すること。
 十、法的根拠のない課税。
十一、議会の承認のない予算運用。
十二、日本国民でない者に永住権を与えること。

◇筆者コメント:

解説:
 藩の税収を上回る補正金の分配を受けられないようにした。つまり、予算は最大で税収の倍額までとなる。赤字藩の自助努力をうながすためである。
 また、官僚の人事権も内閣総理大臣にあたえた。これにより官僚の政策妨害や暴走を防ぐ。

 「予算の百分の一を超える金額の国民資産を外国に譲渡すること。」とは要するにODAのことである。
 外務大臣や外務官僚にしてみれば朝貢土下座外交が最も楽な選択だ。本来外交とは外国との国益をかけた丁丁発止だ。しかしあらかじめ国益を投げ出し土下座し国民の資産を外国に垂れ流せば、外交をやる必要がなくなる。馬鹿正直に国益をかけて汗水たらして外国政府とやりあうより、外国のパシリになり公費を横領して暮らすほうが役人にしてみれば楽だから国益放棄外交を行っているのだ。もちろん外務大臣や外務官僚にとっては楽でも、国民にとっては最も負担のかかる最悪の選択に他ならないのだが。
 この条文でこういう戦後の続いてきた売国土下座朝貢外交を抑止する。

 「利息額が予算の百分の一を超える金額の国債を発行すること。」により現在のような赤字国債乱発を抑止する。
 国民にせよ政府にせよ負担をこうむるのは嫌がるものだ。消費税を嫌がり税金を払い渋り桁外れの赤字国債を子孫に押し付けておきながら、「子供たちの未来のための政治を」などとぬけぬけと言う「市民」もいる。そういう馬鹿の票を失うことの怖さに自民党政府は国債を乱発し子孫に子孫にとツケを回してきた。増税をすれば反発がくる。そこで政治家は子供に目をつけた。相手が子供もしくは生まれていないことをいいことに、その懐に手を伸ばし六百兆円以上もの金をごっそりと毟り取ってきた。文句を言う能力の無い相手からかすめとるこの有様は、禁治産者寸前の老人を相手にした詐欺に似ている。
 国債とは子孫からの借金なのだ。

第二十九条、内閣総理大臣の禁則

 内閣総理大臣は以下の行為を行ってはならない。

 一、三親等以内の親族者を閣僚や政府委員に任命すること。

◇筆者コメント:

解説:
 独裁国家にありがちな身内による親政を抑止する。

第八章、司法

第三十条、裁判院

 裁判院は、国民の司法権を代行する組織である。
 日本国国土内に存在する人間に対しては、国籍軍籍の有無を問わず全て日本の裁判院及び裁判所が司法権をもつ。

第三十一条、裁判院成立の条件

 裁判院は、国民による選挙により選ばれた裁判院議員により構成される。天皇の招集により裁判院は成立する。
 裁判院議員は最大三十人である。

◇筆者コメント:

解説:
 裁判院が裁判院として認められる条件を定義している。
 議員の無用な増加を抑止するため、三十人と限定した。

第三十二条、裁判院が行う事

 裁判院は、以下の行為を行う。

 一、最高裁判所長官の指名と解任、及び天皇への報告。
 二、議長など議会の運営に必要な人員を任命する。
 三、違憲立法審査。違憲条令審査。違憲判決審査。違憲行政審査。
 四、特に裁判院が必要性を認めた場合、違法審査。
 五、以上の審査結果の実行を議会、行政、裁判所に命じる。

◇筆者コメント:

解説:
 ここでいう違憲判決審査とは、「違憲であることを認定する判決」ではなく、「裁判所の判決そのものが違憲かどうかを審査すること」である。
 ちなみに違憲判決を下したと認定された判事は、国民意識から逸脱しているとみなし、下級審に格下げしたり別の職務に配置転換するといいだろう。これにより判事には、国民意識に準じた判決を下すようにさせる。

第三十三条、最高裁判所

 最高裁判所は司法を行う。全権は最高裁判所長官にある。最高裁判所長官は、下級判事を任命し司法権の一部を代行させる。

第三十四条、最高裁判所長官となる条件

 最高裁判所長官は、裁判院の指名により選ばれる。天皇の任命をえて任官する。最大任期は十年とする。

◇筆者コメント:

解説:
 現行憲法では最高裁判所長官や下級判事は全て内閣総理大臣に任命される。これでは三権分立が明瞭ではない。国会に指名させる憲法案もあるが、同様である。
 本案では、最高裁判所長官は、裁判院に任命され、下級判事は最高裁判所長官に任命されることとした。

第三十五条、裁判所が行う事

 裁判所は、以下の行為を行う。

 一、違憲条令審査。違憲行政審査。
 二、違法審査。
 三、条例違反審査。
 四、以上の審査結果の実行を行政や国民に命じる。

第三十六条、司法の禁則

 裁判院及び裁判所は以下の行為を行ってはならない。

 一、上級審の判例に反する判決を、上級審判決後十年以内に下すこと。
 二、刑事事件の審理に、二年以上の審理期間をおく。
 三、刑事事件を除く全ての審理に、一年以上の審理期間をおく。
 四、事件被害者や遺族の身元開示。
 五、事件被害者による秘密裁判要求を無視する。
 六、被害者もしくは遺族による秘密裁判要求を除いた審理や判決の隠蔽。
 七、治外法権を認めること。

◇筆者コメント:

解説:
 「上級審の判例に反する判決を、上級審判決後十年以内に下すこと」は、法的な不平等を抑止するために定めた。同様の事例で異なる量刑があっては不平等だ。
 また長期裁判を避けるため審理期日を設けた。

第九章、藩

第三十七条、藩、藩主

 藩は、国会による藩割りにもとずく地方行政単位である。条令の可決を除くあらゆる藩政を行う。その全権は藩主にある。藩主は、藩官を任命し藩政の一部を代行させる。

◇筆者コメント:

解説:
 政治機構における藩の位置づけを定義している。
 いわいる都道府県を廃止した。無用だからだ。中央政府と藩(地方政府)のみとした。

第三十八条、藩主となる条件

 藩主は、藩民による選挙により選ばれる。天皇からの任官により藩主となる。

◇筆者コメント:

解説:
 藩主となる条件を定義している。
 天皇からの任官を必要にした。江戸時代の藩主が「(日本の地名)のかみ」という称号を天皇から賜り藩主となっていた伝統にもとづく(ただし称号となる地名と領地の場所は無関係だった。)これに関係性を持たせ、例えば難波藩藩主に「難波の守(なにわのかみ)」、世田谷藩藩主に「世田谷の守(せたがやのかみ)」という称号を与える。

第三十九条、藩が行うこと

 藩は以下の行為を行う。

 一、予算案や法案を作成し藩議会に提出する。
 二、福利厚生を行う。
 三、社会基盤整備を行う。
 四、藩民が行う伝統的な文化活動の保守繁栄を補佐する。
 五、藩民が行う経済活動を補佐する。
 六、藩民に郷土文化の教育を行う。
 七、業務の委託先、委託内容、委託金額など政策の開示を行う。
 八、藩民への飢餓や人権侵害を抑止する。
 九、賭博、売春斡旋。公益事業。
 十、内閣が行う国防危機管理に協力する。

第四十条、藩の禁則

 藩は以下の行為を行ってはならない。

 一、日本国からの独立。
 二、反国家的反国民的な教育や煽動。
 三、内閣の承認を得ずに他藩からの入藩を遮断すること。
 四、内閣の承認を得ずに他藩の藩民の移籍を禁じること。
 五、内閣の承認を得ずに殺傷武器を所持した軍隊や藩防衛組織を編成すること。
 六、内閣や司法による査察を妨害すること。
 七、藩の領地や藩民を他藩や外国に売買もしくは譲渡すること。
 八、内閣による国防危機管理への協力を怠ること。

第十章、条例の立法

第四十一条、藩議会

 藩議会は、藩民の条令立法権を代行する組織である。

第四十二条、藩議会成立の条件

 藩議会は、藩民による選挙により選ばれた藩議会議員により構成される。

◇筆者コメント:

解説:
 藩議会が藩議会として認められる条件を定義している。

第四十三条、藩議会が行う事

 藩議会は、以下の行為を行う。

 一、条令を可決承認し発布する。
 二、議長など議会の運営に必要な人員を任命する。
 三、藩主が提出する予算案を承認する。
 四、議決内容を開示する。

第十一章、官僚

第四十四条、官僚

 官僚は、内閣総理大臣や最高裁判所長官や藩主など、国民の代表者の職務を代行する国民である。

第四十五条、官僚の任官

 官僚は、内閣総理大臣や最高裁判所長官や藩主など所轄最高責任者により任官、解任される。官僚は兵役もしくは民役を終えた国民であること。

◇筆者コメント:

解説:
 驚くべきことに、現在内閣総理大臣に官僚の人事権がない。所轄大臣にある。内閣総理大臣には、大臣の任命権しかない。そのため官僚は、内閣総理大臣の直属機関を無視するなど総理大臣を舐めた行為を時折行う。また、組合教師などにもそういう体質の官僚は多い。
 これは全て所轄最高責任者に人事権がないからだ。所轄最高責任者に命令違反官僚の解雇を可能にすればいいだけの話だ。

 官僚には高い公共心が求められる。兵役や民役はそれを育むのに極めて有効である。
 徴兵制をしく韓国では、兵役を終えたことが官僚になるための条件となっている。公共心ある者を官僚にする制度だ。合理的で優れた制度だと思う。
 過酷な軍隊生活はやる気の無い人間をふるい落とし、血税を受け取るに足る人材を選別するだろう。また官僚としての誇りと愛国心と責任感を育むだろう。
 ただ、そのため韓国では女子の官僚が少ない。女子にも官僚となる機会を与えるためにも、老人介護など民役をも官僚となりえる条件に加えた。

第四十六条、官僚の禁則

 官僚は以下の行為を行ってはならない。

 一、天皇の権威を侵害すること。
 二、国民の政治権力を侵害すること。すなわち内閣総理大臣や最高裁判所長官や藩主など、所轄する国民の代表者の命令を無視もしくは反すること。
 三、職務中における政治活動、思想活動、宗教活動。
 四、収賄を受けること。
 五、公財産の横領。すなわち政府が所有する物資や不動産や金銭を着服すること、及び組合活動など勤務時間内での私的活動。
 六、官僚として与えられた権力を、私的な目的のために行使すること。
 七、業務の委託先やそれらから受注する機関に就業中または退職後に就職すること。
 八、業務の委託先やそれらから受注する機関の経営者となったり、株式を所持したりする事。

第十二章、政党

第四十七条、政党

 政党は共通の政治理念をもつ国民の集まりである。各種選挙に立候補者を擁立し、政治理念の実現を目指す。
 以上の条件を満たし、かつ実際に議員や行政の長をもつ政治組織は、政党と名乗らなくとも本要件に該当する。

第四十八条、政党の禁則

 政党は以下の行為を行ってはならない。

 一、党内の最高責任者や指導者を、党員による秘密選挙以外の方法で選出すること。
 二、党員に、党中央やその政策や政治理念への批判を禁じること。
 三、革命や暴動の扇動や外患誘致など選挙によらない政権奪取の企み。
 四、党員に対する監禁や恫喝による洗脳。
 五、武力組織を編成すること。

◇筆者コメント:

解説:
 要するにこれは独裁政党を禁止する条文である。
 憲法草案としてでこれを提起すると共産党あたりは必ず反対するだろう。それでいい。上記は民主国家の政党として極めて一般的な要件である。共産党がこれに反する独裁政党であることを満天下に知らせることができる。
 いずれにせよ新しい憲法制定を行おうとすると、共産党は間違いなく反対する。新憲法草案でこの条文を入れておくことにより、「共産党は新憲法制定反対を騒いでいるが、その本音は独裁政党禁止の条文が気に入らないに過ぎない。」と喧伝することができる。

まとめ

 本憲法私案の特徴を以下にまとめる。

@ 世界一般の憲法と比較した上での特徴

 ・政治機構における皇室の役割を定義している
 ・権力権威二分化制による独裁体制の抑止

@ 昭和憲法と比較した上での特徴

 ・国民の祖先に敬意をはらっている。
 ・政治機構の各構成員同士の責務関係を明瞭にしている。
 ・極力抽象表現を省き全文を具体化論理化している。
 ・説教や政策内容の定義を減らし、子孫の政策運営を自由にしている。
 ・国家元首を定義している。
 ・国土国旗国歌年号など国に必要な要素を定義している。
 ・参議院の廃止。
 ・違憲審査を行う裁判院の設置。それによる司法の完全独立。
 ・内閣に国防の責務を科している。
 ・都道府県制度を廃止し、中央政府と藩の二体制とする。
 ・地方分権。
 ・官僚の規範を定義し官僚の暴走を抑止する。


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