漫画の「あしたのジョー」に興味深いシーンがある。しつこく拳闘を勧める丹下段平に対して、矢吹丈は「俺を猿回しの猿に使って一儲けしようとしてるんだろう。」という主旨の指摘をする。これに対して丹下段平は「その通りよ。」と素直に答える。(こういった奇麗事に終始しない徹底したリアリティが梶原作品の魅力の一つだ。その後丹下は拳闘への真摯な情熱を語る。)
プロスポーツ選手とは、要するに悪く言えば猿回しの猿だろう。プロ野球選手は球団という猿回しの猿であり、大相撲の力士は相撲協会という猿回しの猿だ。
そして言うまでも無く他人をなんら猿回しの猿に使ってよい。以下条件を満たす場合は。
* 猿となる者が猿となることを認識し了承する判断力のある大人であること
* プロフェッショナルとして十分な金銭的な見返りがあること
大相撲であろうがプロ野球プロサッカーであろうが、上記条件を満たす。なんら存在してよい。判断力のある大人が納得ずくで行っていることだ。
その一方、高校野球の卑劣な点は以下だ。
* 主催者には莫大な金銭的な利益がもたらされながら、ビタ一文出演者(選手)に支払わない点
* そういった事柄の理不尽さを理解できない子供を使う点
意外と知られていない事だが野球の本場アメリカには高校野球大会のようなものなどない。勝ち抜き戦がもたらす勝利至上主義のもと、身体育成途上の子供に学業そっちのけで練習させ、大会では子供に連戦連投させ将来有望かもしれぬ子供に時に肩を潰させ、そういった大会の映像で主催者は莫大な利益を得、出場高側も宣伝効果を得るようなマネをする狂った野球大会など存在しない。
とはいえアメリカにも大学リーグは存在する。ただ大学の場合は、ある程度大人でありまた体もほぼ完成しているためまあかまわないだろう。勝利至上主義の部活動があっても。
予選段階からニュースや大新聞が連日報道し、本戦ともなれば真昼間から国営放送が連日完全生中継をする。子供の野球大会を、である。あらためて考えてみれば異常極まりないことだ。
毎日朝日が主催しNHKが放映するこの子供の野球大会。猿回しの猿に子供を使い莫大な利益を得ながら、本人には「名誉」のみ。子供をおだてて使うのはこういった連中の常套手段のようだ。